
SACHIE IGARASHI
五十嵐 幸枝 (左)
36歳 |
会社員/設計 |
埼玉県出身 |
FTM |
#017 2019年4月撮影
カミングアウト
私には縁の無いものだと思っていました。
初めて自認と体の違いを感じたのは幼稚園の時で、その時から幼いながらにこれは人には言ってはいけない事だと思いました。
それからは誰と接していても本当の事を隠している後ろめたさもあり、家族や友達にも言えないことに罪悪感さえ感じていました。
大学生になって初めて女性とお付き合いした時も、誰にも堂々と紹介できないことに申し訳なさを感じていました。
このまま隠していかなきゃいけない関係ってなんなんだろう。
人を好きになっていいのかな。
そんなことを考える日々でした。
それからストレートだった彼女とは、普通に男性と結婚した方が彼女も幸せになれるだろうと思ってお別れしました。
それからは誰と付き合っても結果は同じだとしか思えず、人と付き合うことさえ避けていました。
でも何年も経って一人で生きていく寂しさに勝てず、結局お付き合いしてくれる人を探していました。
そんな時に出会えたのが彼女です。
カミングアウトなんて一生誰にもできない。してはいけないと思っていた私が、彼女と付き合って変わりました。
カミングアウトをしてどう思われるだろう。
今までの関係は無くなってしまうかな。
そんなマイナスのイメージしかできなかった私ですが、彼女と公正証書を作成して結婚すると決めてからは自分でも驚くほどに行動的になりました。
学生時代からの友人、会社の同僚、家族。
伝える前はやはり不安で怖かったけど、伝えた相手はみんな当たり前のように自然と受け入れて祝福してくれました。
田舎の祖母や親戚はさすがにハードルが高かったけど、親が先に伝えてしまっていて(笑)
それでも祝福して、彼女に会いたいと言ってくれました。
行動に起こすことはとても勇気がいるし体力もいります。
どんな結果になるかわからないことなら尚更に。
でも行動した結果、本当に視野も世界も広がりました。
人によってカミングアウトするタイミングや内容は様々だけど、「この人には伝えたい」と思える人にはちゃんと伝えた方が、自分自身も相手との関係も前進したように思います。
「カミングアウト」ってストレートの人には無いイベントで、何でわざわざ自分の性癖みたいな部分をさらけ出さなきゃいけないんだって思うこともあるけれど、今の世の中にはまだ必要なイベントで、それが自分を守るための行動の一つだと今では思えます。
これから先、一人でも多くの人が自分らしく生きていくことが当たり前の世の中になってくれますように。
YURI KITAMURA
北村 由梨 (右)
33歳 |
会社員/人事 |
東京都出身 |
レズビアン |
#017 2019年4月撮影
同性を恋愛対象として意識するようになったのは学生の頃です。
息をするようにごく自然に一目惚れをして、それがたまたま同性だったというだけで何も違和感は感じませんでした。
私は見た目からストレートだと思われます。勇気をだしてカミングアウトしても冗談だと疑われたり、どんなに真剣に恋愛していてもいつか男性と結婚しそうだと言われてきました。
なぜ自分の恋愛対象は同性なのかという理由のない感情を、他人が理解できるように説明することの息苦しさを感じました。
このような経験から、カミングアウトをした所でどうせ信じてもらえないと思うようになり、いつか最愛の人と出会って結婚をしたいという密かな夢も、口に出す事はできませんでした。
自分に自信をなくし、どこかで諦めていたのだと思います。
今、最愛の人と一緒に写真に写っています。
人を愛する事はこんなに尊いことなんだと教えてくれた人です。
昨年、公正証書で婚姻契約を結び、
家族と友人達に囲まれて結婚式をしました。
今は大きな声でカミングアウトできます。
この人を守るために。
この人と一緒に生きていくために。
これからの未来に期待します。
カミングアウトする必要のない世の中を。
LGBTという言葉がいらない世の中を。