OUT IN JAPAN

あなたの輝く姿が、つぎの誰かの勇気となる。
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MIDORI SAITO

斎藤 みどり

56歳
公務員
石川県出身
FTM

#020 2019年9月撮影

1986年に高校教師としての道を歩み始めました。1997年にマスコミが「性同一性障害」を報じ始め、生まれて初めて自分でもわからなかった自分の正体がつかめました。自分のことを隠しながら生きていくことに限界を感じ、1998年にごく親しい人たちと仕事上の上司にカミングアウトしました。しかし、北陸の超保守的な風土の中で周囲は私の正体を抹殺しようとし、様々な思惑が絡み合う中で納得のいかない扱いも多々受けました。カミングアウトした後の方が社会的にも精神的にも追い詰められていったというのが現実。
でも、自分はもう後戻りしないと決めました。キルケゴールの言葉にこんなのがあります。「たとえ全世界を征服し、獲得したとしても、自分自身を失ったならば、一体なんの意味があるというのだろう」。少しずつ、カミングアウトする範囲を広げていきました。私的な生活においては支持し助けてくれる人も増えました。ようやく私は私としての人生を歩めるようになりました。世界はモノクロからカラーに変わりました。
今、世界がようやく私たちに追いついてきたのだと思います。世界のほんとうの姿は男女の二元論的世界ではない。私たちは、ここにいます。太古の昔から。そして未来も。社会的通念に私たちが合わせるのではなく、私たちの存在に社会的通念を合わせてもらうことは、とても大切なことだと思います。カミングアウトは自分のためだけのことではありません。「多数者」には見えていないことが世界にはたくさんあります。少数者が声をあげることで、世界のほんとうの姿が現れてくる。そしてそれは、誰にとっても住みよい社会の始まりであるはず。そう信じて。