SHOKO KURODA
黒田 祥子
21歳 |
アルバイト |
北海道出身 |
FTX /パンセクシュアル |
#011 2017年10月撮影
「それは読んではいけないよ、男の子が読む本だよ」
小学生の頃、休み時間に恐竜の本を読んでいると、同級生の男の子がやってきて、私に強くそう言った。
それに対して特に言葉を返すこともなく、本を机の中にしまいながら、
『ああそうか、ここはそういう世界なんだな』
と子供ながらに悟ったことを今でも覚えている。
当時は漠然と心にモヤがかかっただけだったが、今なら当時の気持ちを言葉にできる。
そういう世界とは“当たり前”が密集している世界のことだ。
しかし、10年前、想像もつかなかったものが、今溢れかえっている光景は、“当たり前”という言葉の脆さを気づかせてくれる。
そんな光景の移り変わりは、物だけでなく、人々の心も変化させていく。
最近は、LGBTQについての報道も多くなり、当たり前だと思っていたことが実は当たり前ではなかった、自分だけだと思っていたことが、実は違ったと知ることができるようになった。
少しづつ、確かに変わってきている。
だからこそ、私たちは気をつけなければいけない。
知らないもの、よくわからないものを、人はある程度想像することは出来たとしても、目の前にあるものとして行動することは難しい。
それがマジョリティーであったとしても、身近に感じられない人にとってはやっぱり難しい。
誰であっても皆難しいのだ。
受け入れろと、絶対に強要してはいけない。
一番大切なことは、
自分を知ってもらう前に、まず私たちが相手のことを全力で受け止めようとすることだと思う。
それはあり得ないと、自分から真実を突き放したりはせずに。
そのことだけを注意しながら私は毎日を生きようと心に決めている。
私にとってのカミングアウトとは、
“相手を知ること”と同じである。
相手とコミュニケーションを取った分だけ、自分のことも自然と相手に伝わっていくような気がしている。
その本は読まないほうがいいと注意してくれた男の子に、もしまた再会することがあったら、きっと私はこう言うだろう。
「けんちゃんはどんな本が好きなの?」