Hikaru Ozaki
尾崎 光
21歳 |
学生 |
千葉県出身 |
パンセクシュアル |
#006 2015年12月撮影
今まで、カミングアウトなんてなんでもないことだと思っていました。
自分の中で恋愛対象に性別を問わないことは当たり前で、ごく自然なことでしたが、それが「バイセクシャル」と名付けられるものであるとわかり、高校に上がってからは少しずつ友達にそのことを告げるようになりました。誰も私を否定したり拒絶する人はいませんでした。
上京してたくさんのひとに会いました。セクシャルマイノリティであるという、生まれも育ちもばらばらな生身の人がそこに確かにいました。新しく知ったパンセクシャルという言葉も、徐々に口から自然に出るようになってきました。
身近な人にも言ってみることにしました。学校の友達、バイト仲間、親、袖振り合った様々な人たち。嫌悪感を表したのはごくわずかで、みんなわたしを否定しませんでした。だから、カミングアウトなんて簡単で、なんでもないことだと思っていました。
しかしつい最近、お互いのことを何も知らない、これから繋がることもないであろう、初対面の人にカミングアウトする機会がありました。その人の発した何気ない言葉が、今まで何度も聞いたであろう異性愛しか存在しないというような表現が、なぜかその時胸の奥に深く刺さり、この苦しさを訴えずにはおれなかったからです。そこで初めて私は、「私」を知らない人に「セクシャルマイノリティ」として話しかけました。それは、とても恐いことでした。
私は今まで、「私」を否定しない人にしかカミングアウトしてこなかったのだと初めて気が付きました。「私」ではなく「セクシャルマイノリティ」として知らない人に何か訴えるのは、とても勇気のいることです。そのことを、けして忘れはしません。
そして、私をヘテロなど信じて疑わないこの空気を、私は私のために笑って裏切り続けていきたいです。まだ願望でしかないです。でもきっとまた私は自分のために声を出せるでしょう。誰かもまたそうできるよう祈ります。