Itaru Tomita
冨田 格
51歳 |
ライター |
大分県出身 |
ゲイ |
#006 2015年12月撮影
「カミングアウトって、する側の気が楽になるだけで、された側は一方的に重荷を背負わされるのでは?」
僕がカミングアウトすることを躊躇していた理由がこれです。
僕はゲイ雑誌の編集業務に20年間も携わりながら、家族の誰にもカミングアウトしてきませんでした。
当然、どんな仕事をしているのかはっきり言うこともできず、曖昧にしたままでした。
そんな僕が2014年、50歳になる夏に初めて兄にカミングアウトすることを決めました。
それは会社を辞め、独立することにしたのがきっかけでした。
独立することで、インターネットを通じて僕の名前と仕事が一致してくる可能性は大いに考えられます。
予期せぬ形で僕のセクシャリティに直面するよりも、僕自身の口で明らかにする方が受け入れられるのではないだろうか?
さらに兄を味方につけたい、という下心もありました。
正直、最初は驚いた兄でしたがなんとか理解してくれたようで、それから一年少々の間に、兄に促されるように、もう一人の兄や兄達の家族へとカミングアウトが続いていきました。
カミングアウトに対するそれぞれの反応は、僕の予想を裏切るものでした。
兄嫁や姪っ子から「気が楽になった」と言われたのです。
カミングアウトされた側の「気が楽になった」理由は、それまで僕が曖昧にしていた部分(仕事や結婚や恋愛など)で気を揉んでいたのがクリアーになったことだとか。
それ以降、彼女たちとの距離がグンと近くなったように感じています。
仕事で出会った女性とカミングアウトの話題になったときに言われたことも、印象に残っています。
「もし私の息子がゲイだと話してくれたら、私は嬉しいです。だって、彼が私を信頼してくれたってことでしょう?」
カミングアウトがどのように受け止められるかは、それぞれの環境や個性、経験によっても異なると思います。
ただ、徒に答えを決めつけてしまうことは間違いだと、50歳のカミングアウトを通じて僕は学びました。