Hisanori Matsuo
松尾 恭典
35歳 |
会社員 |
岐阜県出身 |
ゲイ |
#008 2016年3月撮影
私は22歳の時に、ゲイ専用のSNSで知り合った方から強烈なストーカー行為を受けました。
知人や家族に被害が及ばないよう、またゲイであることを知られないよう、すべての連絡を絶ち独りで遠くに逃げました。
行方不明になった私を友人や家族は懸命に探してくれました。
やがて、一人の友人が私の居場所をつきとめ、ストーカーから私を守ってくれました。
そして、私の身を守ろうとしたときに、友人は生死をさまよう大怪我を負うことになりました。
この事件をきっかけに私は警察を通じて、家族と私を親身になって探してくれた友人たちに、一度にカミングアウトをすることになりました。
「お前が死んで、ゲイであることも知らないまま二度と会えなくなる人たちの事を考えてくれ!!」
それが家族と友人たちから揃って伝えられた言葉でした。
私のカミングアウトは、結果的に通常のカミングアウトよりも、寛容に相手に受け入れてもらえる特別なケースになったことは確かです。
しかし、私の大切な人たちは、「ゲイ」であることよりも私自身をまっすぐにいつも見ていてくれました。
この時、私は感じました。
ゲイであることを認めてもらいたいのではなく、自分というものを知ってもらいたいという気持ちが一番大切なんだと。
カミングアウトは、すべての方に良い結果をもたらすものではありません。
LGBTの人にもそれぞれの環境があるので無理はしないでほしいです。
しかし、もし一人でも自分のことを知ってもらいたい方がいるのなら、それはその人を大切に思っている証です。
その気持ちをカミングアウトという特別なものに、少し勇気を出してみませんか。
その微小な勇気を一人一人が持ち始めれば、きっと差別のない、普遍的な愛が認められる広い世界になると信じています。