Tomoru Inoue
井上 燈
31歳 |
会社員 |
東京都 |
FTM |
#004 2015年11月撮影
いつもなんとなく浸透していくので、カミングアウトらしいカミングアウトをする機会の少ない人生ですが、初めてちゃんと母親と向き合おうとしたとき「わかっていたけど聞きたくなかった」「もうその話はしないで」と一方的に話を打ち切られました。
僕の場合、恋愛対象は物心ついた頃から明白でしたが、性自認というのはなかなか悩ましく、自身を区分して線引きしてしまったら何かを狭めてしまいそうで、ずっと自分なりのペースで歩いてきました。
どうしても、本来はわざわざ意識しなくてもいいことなのに、当たり前のことが当たり前じゃなくて、それが当たり前で…。かといって、いい意味で”特別”なわけではない。
ある時、僕が自分のタイミングで納得いった時が来て、ケジメをつけて動き出してから、母は驚くほど変わってくれました。会話の端々でも、頭だけではなく気持ちもついてきている部分を感じます。産み育てた自分自身を責め、頑なに拒み、とにかく嫌がっていた母。今は僕のために本当に頑張ってくれています。本当に本当にありがとう。
ちゃんと言葉にして伝えることで、今までお互い有耶無耶にして、ずっと見て見ぬふりをし続けてきた大きな大きな雲が晴れ、やっと母と向き合えるようになりました。やっと母を大事に思えるようになりました。僕が覚悟を決めたことで、母も覚悟を決めてくれたのかもしれません。
自分の意思で選んだことなら、
それがどんな結果になろうと後悔はない
煩わしいことも多いけど、せっかくなら味わったもん勝ち。僕はずっと、この人生でよかったなと思っているし、きっとこれからも面白い人生になるだろうと信じています。何事も本人の捉え方一つだと僕は思います。万人に理解されなかったとしても、本当に伝えたい相手には必ず伝わります。