OUT IN JAPAN

あなたの輝く姿が、つぎの誰かの勇気となる。
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Hiroshi Taniyama

谷山 廣

45歳
編集者/ 活動家
熊本県出身
ゲイ

#003 2015年10月撮影

僕が家族にゲイであることをカミングアウトしたのは、22歳の頃。ゲイ雑誌の編集者として仕事をすることになり、職業人のけじめとしてそれを家族に話すことがきっかけだった。
家族が集まっていたその日、僕は実家の奥の部屋へ呼ばれ、母親から「私の育て方が悪かったの?」と泣かれ、おばからは叱責をうけた。父親は「女じゃだめなのか」とひとことだけ言った。
受け入れてもらえないことは、確信していた。僕は、儀式としてひとりよがりの戦いをしかけただけだった。

本当は、辛かった。それが、なかなか認められなかった。虐待や家庭のむずかしさ、いじめやホモフォビア、孤独。自分のことを大切になんてできないまま、おとなになった。
アルコールやドラッグ依存の猛威、ホームレス生活、失恋、HIVとのたたかい、母親の自死、重いうつ病、過酷な労働環境。手段はえらばなかったが、困難のなか生きのびてこれた。支えてくれるひとたちや、苦しさ喜びを分かち合う仲間がいてくれたこと、そしてコミュニティがあったことに、本当に感謝している。

死んでしまった仲間たちも大勢いる。志なかばで逝った活動家。自死した昔のパートナー。夢の島と名付けられた公園で撲殺されたゲイ。エイズで亡くなった愛されるべきひとたち。
あなたたちの命のおかげで、いまの私たちがあることを、決して忘れはしない、語り継いでいくと、表明したい。

カミングアウトに、失敗や成功はない。カミングアウトをすることもしないことも、私たちの生きる営みだ。
ただ、あなたが辛いときは、どうかよりそわせてください。僕が、そうしてもらったように。僕がいま外におし出すのは、まだ生きづらいだれかへの、そんな願いです。