Fumino Sugiyama
杉山 文野
33歳 |
飲食店経営 |
東京都出身 |
FtM |
#001 2015年3月撮影
人生初のカミングアウトはおかん。付き合い立ての彼女と抱き合っているところを見られ、自分で言う前にバレてしまった。中学生の時だった。
「あなたは頭がおかしい。病院に行きなさい。」
そんなスタートだったおかんも、今では僕の一番の理解者である。
友達には黙っているのが苦しくなりすぎて、吐き出すようにカミングアウトしてしまった。高校生の時だった。
「何がどうであれ、フミノはフミノじゃん。」
放課後の部室、苦し過ぎて泣きすぎて、何をどう話したのかは思い出せないけど、この友のひと言だけは一生忘れることができない。
おばーちゃんに話したのは大学生の時だった。
性同一性障害のカミングアウト本となる自叙伝の発売が決まり、テレビ出演も控え、他人から耳に入るくらいなら自分でちゃんと伝えようと思ったからだった。もうすぐ90歳を迎えるおばーちゃん、ビックリして倒れちゃったらどうしよう…。
そんな僕の心配とは裏腹に、
「あんたがそうゆう活動をすることで救われる人もいるでしょう。大変かもしれないけど頑張りなさいよ。」
と、孫娘であった僕の事をすぐ「彼」と呼ぶようになった。年寄りには理解出来ない、という僕自身の偏見に気づいた。
今までどれだけのカミングアウトを経験しただろう。国も文化も宗教も越えて、時にはテレビの前で何万人にも向け、時にはこっそり隣の人に。実は今でもカミングアウトする前は、ちょっと怖い。
でも、自分が心を開いた分だけ、きっと世界も開けてくる、僕はそう信じています。