OUT IN JAPAN

あなたの輝く姿が、つぎの誰かの勇気となる。
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Mitsuaki Kishida

岸田 光明

57歳
飲食店経営
大阪府出身
ゲイ

#001 2015年3月撮影

僕の年代では珍しく、若い頃に思いあまって両親にカミングアウトしてしまった。「してしまった」と書いたのは、当初、父はそれを受け入れることが出来ず、怒り、嘆いていたからだ。

だが、それからずいぶん経って、僕が大病をし、両親は病院で僕のパートナーと会うことになった。結局、その日から僕が入院中、両親、パートナーとで数週間、3人で共に暮らすという思わぬ展開となった。それは父の気持ちをガラリと変えたようだった。そして、父が死ぬ直前には、父自ら、病院の院長や看護師の方たちに私のパートナーを紹介するまでとなり、葬儀の時には、彼は僕の母の隣に座った。

最初の経験があったため、僕自身、こと、親へのカミングアウトを若い人に勧めることは少し考えてしまう。ふた周り以上も違う世代の人たちに、「同性愛」を受け入れることを強要することが本当に正しいのか、大きな問題だ。
万が一、カミングアウトする際も、単に「自分自身が同性愛者である」ということを伝えるのではなく、パートナーなり、友人を紹介することで、その人と成りや、関係性を理解してもらうことがベターなのかも知れない。

親に比べると、親しい友人や、兄弟、姉妹は別だ。世代も自分に近い人たち。そういう彼らに自分自身のことをきちんと伝えようとすることで、その人たち自身のLGBTに対する心持ちが変化する可能性はとても高い。彼らが受け入れてくれれば、それはさらに大きく広がりを見せる。それこそ、LGBTに対して、世の中が変わることへの草の根運動に繋がるはずだ。

パレードや、多くの解放運動、社会的アピールもとても重要だ。だが、結果的に、ストレートの人たちにとって、見ず知らずの人たちが何かをやっている、ということよりも、身近にそういう人がいる、という事実のほうが、気持ちは動くのではないか。

いずれにしても、個々のカミングアウトこそ、世の中を変えていく一歩であることは間違いない、僕はそう信じたい。