Yoichiro Okumura
奥村 洋一郎
29歳 |
会社員 |
神奈川県出身 |
ゲイ |
#001 2015年3月撮影
僕にはかつてムカつく女がいた。
目元は隙なくメイクするくせに、髪はいつもプリンでバサバサ。足を出して高いヒールを履けばオシャレだと思っている節のある中途半端な女だった。
容姿だけを指摘して腹を立てていたのには理由がある。
人柄では勝てなかったのである。
それ故に今までの自分の生き方を真っ向から考えさせられたのである。
早い話が鼻っ柱を折られたのである。
「人生の半分以上を海外で過ごしてきた」と言うと「一番苦労した事は何か」という質問を良く受ける。僕の場合、滞在先の共通言語を使えないと必ずと言って良い程「頭が悪く怠惰な人だ」と思われる事が一番辛かった。悔しい一心で語学力を磨き、終いには住民と間違えられるまでになった。
では、何が変わったのか。
一目は置かれた。
でも、誰かとつながる事は出来なかった。
そんな中、その女が僕が在籍していた大学に短期留学生として現れた。
英語で話しかけられても関西弁で返答するくせに、僕達日本人生徒の中で誰よりも早く友人だけでなく彼氏まで作ったのである。
その時気付いたのだ。
僕は今まで「人」ではなく「言葉」と向き合ってきたという事に。
大切なのは言葉ではない。
その向こうにある人間なのだ。
先日、俳優の中井貴一さんが
「俺が最終的に役者として目指したいのは棒読み、無表情、これで全てが伝わる俳優になりたいって、今目指すのはそういうところなんですよ。役者をやっていて突き詰めていくとあそこに行き着くんですよ」と興味深い事を言っていた。
カミングアウトとは何かを宣言する事だ。
それは自らを枠に嵌め、また、他人に嵌めてもらう事だ。
でもそれに言葉は本当に必要なのだろうか。
同じ対談の中で中井さんは
「でもそれは色んな事を経験して、、色んな事が出来る様になっていないと、ただの下手で終わってしまう」と続けている。
僕の中でカミングアウトとは何か、どう行うと良いのか、答えを出せていない。だからこそ、中井さんの言葉を借りるなら、色んな経験して少しでも答えに近付く事が出来ればと思う。この”OUT IN JAPAN”への参加はその第一歩である。