YOUSUKE TAKAKU
高久 陽介
40歳 |
NPO職員 |
香川県出身 |
ゲイ |
#009 2016年4月撮影
中学生のときは、自分が男なのに男が好きだなんて、「誰にも言えない」と思った。高校生のときは、親に隠れてゲイ雑誌を読んでいた。大学生になっても、ハッテン場でセックスをしたりするだけだった。隠れるようにして生きていた、ゲイとしての自分。
それでも、社会人になった頃から、新宿二丁目で遊ぶようになって、ゲイの友達もたくさんできるようになると、いつのまにか孤独感や寂しさはなくなった。
24歳のときに、好きな人ができた。二度目のデートのときに、彼から「俺、HIVに感染してるんだ」と打ち明けられた。それまで、HIVなんてまったく身近な話じゃなかった。いまでこそ、ゲイの20人に1人は感染していて、僕らの間では珍しくない病気になったけれど、当時の僕の周りには、カミングアウトしてる人なんていなかった。
それでも、自分自身にも思い当たることはあるし、彼の気持ちを理解したいという気持ちもあって、保健所で検査を受けることにした。結果は、陽性だった。
まず思ったのは「誰にも言えない」だった。また、あの頃と同じ日々を過ごすのだろうかと…でも、しばらくして考えは変わった。もし彼が大事な秘密を打ち明けてくれなかったら、僕も自分の病気に気づくことはできなかったと思う。その勇気を、無駄にしてはいけないんじゃないか?
…あれから15年が経つ。いまでは、ゲイであることも、HIV陽性であることもカミングアウトして、講演活動をしたり、同じ病気の人たちのための交流会を開催したりしている。講演を聴いた人からは「ゲイの人に会うのも、HIVの人に会うのも初めてだけど、案外フツーの人だった」そんな感想をよく受け取る。交流会に参加した人からは「やっと、HIVのことを隠さずに本音で話すことができた」と言ってもらえる。
カミングアウトしなきゃ伝わらないことって、絶対あると思うんだ。